今回は物理設計シリーズとして、
「あだち流」の電算室LANケーブル長算出方法を解説します。
特定企業の電算室をベースにしているため、
環境依存の考え方も含まれます。
そのため本記事では「あだち流」としています。
また本記事では以下の略称を用います。
・ラック=サーバーラック
・PJT=プロジェクト/社内案件
・無線=Wifi
・U=ユニット(収容スペースのこと)
最初に結論から言うと
LANケーブル長は「直線距離」ではなく「経路」で決めます。
さらに、
- ラックの高さ(U数)
- 床下配線
- 余長
をすべて加味して算出する必要があります。
LANケーブル長 = 縦 + 床下 + 横(経路) + 縦 + 余長
本記事では、実務でトラブルにならない「あだち流」の算出方法を解説します。
LANケーブル長の算出方法|直線距離NG?あだち流で現場目線解説
1.LANケーブル敷設とは(データセンター配線の基本)
データセンターで電子機器同士を通信させるために、
LANケーブルで接続することがあります。
同じラック内だったらあまり考えなくてもなんとかなりますが、
すべての装置が同じラック内にあるとは限りません。
※大抵の場合、用途あるいは所有部署ごとに割当ラックがある
なので「基幹ネットワークに新システムを接続したい」とか
「新しい需要に応じて、別システムと接続したい」のようなPJTが始まると
LANケーブル敷設という工事が発生します。
2.家庭との違い(なぜ設計が必要なのか)
家では「LANケーブルを敷設する」という言葉はあまり使いません。なぜなら
- 床下配線をしない
- ラック管理をしない
- 適当な長さで届く
からです。
散らかるのが嫌で、無線を代用することもありますよね。
一方データセンターでは
- 床下配線
- ラック収容
- 保守性を考慮した配線
が前提となり、設計として扱う必要があります。

加えて事業の一環による工事(普通に仕事)のため
・LANケーブルの購入(何mを何本)
・出張扱い
・失敗した場合は別日程でリトライ
という風にすべて予算取り前提であり、コストも無視できません。
メモ:
ある程度事業展開をしている企業は、
電算室(あるいはデータセンター)を自社で所有していたり、
あるいはデータセンター事業者と契約して利用します。
装置をすべてクラウドに置いて運用していることは稀で、
昔と比べハイブリッド(電算室+クラウド)方式が多くなっています。
3.LANケーブル長の算出方法(あだち流)
ココから本題です。これまで語った前提を整理します。
- 電子機器は電算室のラックへ収容
- 収容したラックから、接続する相手のいるラックまでLANケーブルを引く
- ラックそのものにも高さや奥行き、幅がある
- 配線は床下を通す
これらを通過する距離が、必要とされる「LANケーブル長」となります。
LANケーブル長は以下の合算で求めます。
① 縦(接続元ラック)
② 床下まで
③ 横(床下配線)
④ 縦(接続先ラック)
⑤ 余長
例えば
①:1m + ②:2m + ③:30m + ④:1m + ⑤:1m = 35m
のLANケーブルを準備し配線する、という具合になります。
(画像を挿入予定)
LANケーブルの必要数と配線先ごとに見積もりが必要になるため
必ず必要数の距離計算を行うようにしましょう。
メモ:
LANケーブル1本で足りるとは限らない
またPJT進捗のさなか、追加で必要になるケースもそれなりにあります。
予備のケーブルを用意しておくのも忘れないようにしましょう。
筆者は配線本数に応じて、数本の予備を見積もっていました。
①床~接続元ラックの電子機器収容スペースまでの距離
標準ラックは42ユニット(U)程度搭載でき、
下から何番目(何U目)に収容するかで距離を算出できます。
また1ユニット(U)の高さは44.45mmです。
※各々の電算室で確認してください
例えば20U目にサーバを搭載する場合は以下のように計算します。
20(U)×44.45(mm) = 889mm
889mm = 88.9cm ≒ 1m程度
②床~床下までの距離(1m程度)
精密に計測する必要はありませんが、
電算室の床下はそれなりのスペースがあります。
LANケーブルは床下に這わせて配線するので、
固定値として1m程度見積もっておきましょう。
また相手ラックへも床下から進入するので、
1m × 2(自分&相手の床下) = 2m
となります。
メモ:
床下を這わせない配線は
だれかが足を引っ掛けたりしたときや
他PJTの工事で引っ張られたりしたときに
根本から抜線/断線するリスクがあります
システム障害に直結するため極めて危険です
③接続元ラック~接続先ラックまで床下配線する距離
他は余長を見積もっておけば、ある程度ハマる可能性があり
誤差に近い数字ですが
この「床下配線する距離」は最も重要で、間違いがあると
「LANケーブルの再購入」が必要になってしまいます。
OK: 配線をする経路で計算する
NG: 直線距離で計算する
直線距離では途中他の持ち主のラックが配置されているケースが殆どで
まっすぐ床下を通せるとは限りません。
また配線する経路の距離は、
「床パネルの枚数」を数えることで精度高く算出可能です。
600mm×600mmの床パネルが敷き詰められているとするなら、
50パネル×600(mm)=30000(mm)
30000(mm)=3000(cm)=30m程度
(画像挿入予定)
メモ:
経路ベースで距離算出すると、余長としても利用できるので
相手ラックの場所が違った場合などのトラブルもある程度吸収できます。
⇒いわゆるショートカットも可能
④床から接続先ラックの電子機器収容スペースまでの距離
上記①と同じなので詳細割愛します。
現地調査の際に、相手ラックと相手機器の実物を確認しておきましょう。
ここでは20U目に相手の装置が置かれている前提とします。
つまり①と同様1mの見積もり です。
⑤余長
長さに応じて1~5mぐらいのレンジで見積もります。
遠い相手に向けて配線する場合は
余長が少なくても吸収できるケースがほとんどですが
どちらかと言うと距離が短いときに命綱になりがちです。
ちなみに筆者がネットワークSEをやっていた時は
「固定1mの余長を見込む」と説明していました。
余長がない場合、
・機器のスライド時に抜ける
・配線変更/装置の積み直しに対応できない
・コネクタに負荷がかかる
といった問題が発生します。
4.NGな算出方法
- 直線距離で決める
- 余長を見込まない
- ラック内の高さを無視する
特に「直線距離で計算」は危険です。
LANケーブルは空中を最短距離で通るわけではなく、
実際に通る経路で決める必要があります。
5.あだち流の判断基準
・17mか20mで迷ったら → 20m
・20mか50m → やりすぎ
「届く長さ」ではなく
「無理なく配線できる長さ」で判断するのがポイントです。
6.まとめ
- ケーブル長は経路で決める
- 余長は必要
- ピン張りは悪
- 現地調査を必ず行う
経験則や勘で決めるものではなく、図面を見ながら計算する仕事が
「LANケーブルの配線」です。
7.モチベーション
この記事は
とある漫画の「17mで足りるだろ」
っていう台詞を見たのがきっかけでした
「17mで足りるだろ」に対するツッコミと実体験は
noteにまとめています👇


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